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染み付いとは?/ セントラルファイナンス

[ 457] 血の染み付いた手帳
[引用サイト]  http://kyoukosan.blog.shinobi.jp/

フォウトさんと、イルさんと、楽しい時間を過ごしてきました。イメージ図は此方を参照に。美味しゅうございました、また機会がありましたら、ぜひ。 -��-「……」「恭平さん」 呼ばれて、傭兵は振り返った。「こちらです」 馴染みの女傭兵が、革の鞄を手に立っている。「……とてつもない、人ごみだな。待たせた」「もう少し、場所を詳細に説明すべきでしたね。すみません」 休日の遺跡外――町は人々でごった返していた。 待ち合わせ場所に指定されたオブジェも、人の群に埋もれている。「かまわん。下調べをしなかった俺にも非があるからな」 生真面目に謝る女傭兵に、傭兵は苦笑してみせた。 その様子に、女傭兵がほっと息を吐く。「人ごみは、苦手でな。……俺たちだけか?」「いえ――あと、イルさんがいらっしゃる予定なのですが」 傭兵の問いかけに、女傭兵が答える。 懐中時計を開き、時刻を確認した。「どうも、遅れているようです」 待ち合わせの時刻は、少し過ぎている。「イルか……獣人の貴族だったか」「ええ、素晴らしい方ですよ」「それで、全てか?」 再度、確認するように傭兵が問うた。「それが、ティカさんも来たがったのですが……」「ティカが、か?」 すでに夜の刻――子供が出歩く時間ではない。「あの方は、けっこう飲まれますからね」「そうだったな……」 火と花と、森の宴を思い出す。 あの子供は、大人が負けるほどに、呑んでいたような気がする。「それで、来たがったのですが――ホマレさんと、マツリさんに止められたようです。 私としては、少しホッとしています」「……さすがに、街中では、な」 遺跡の中でなら、蛇の道は蛇――細かなことを気にしない傭兵たちである。 しかし、遺跡外のような衆目のある場所では、それがトラブルを招くこともある。「残念ですが、今夜は我慢していただくほかはないでしょう」「……ああ。どうやら、待ち人も来たようだ」 会話を切り上げ、路地のひとつの示す。 街灯に照らされて、白い毛並みの獣人が浮き上がってきた。「……すみません。道に迷ってしまいました……」「こちらこそ、詳細な地図を用意すべきでした」 しきりに謝罪する犬人に、女傭兵は頭を下げる。「揃ったのだからよしとしよう――フォウト、案内してくれ」「そうですね……申し訳ないのですが、寄り道をしてもよろしいでしょうか?」 女傭兵は、確認するように二人の顔を見る。「……私は、かまいませんけれど」「好きにしろ」 即座に返答がある。「申し訳ありません。珈琲豆を切らしてしまいまして」「なに、もののついでだ。……かまわんさ」 傭兵が追うように頷く。「ありがとうございます。では、こちらへ」 歩き出した女傭兵について、二人も歩き出した。つづきはこちら
-��- 白い空間に剣戟の音が満ちた。戦っているのは男と女だ。 しかし、その体格に差はない。 黄金のブロンドを豪奢に伸ばした女は、エプロンドレスを身にまとっている。 相対する男は野戦服に身を包み、その対極的な様は冗談のような光景だった。 だが、その戦いは正真正銘の本物であり、命を削るような一撃の応酬が続いている。 一見、攻勢にまわっているのは、男であるように見える。 電光石火の動きで床も天井も関係なく、両の手に握る短剣を武器に果敢に攻め入っていた。 その実、その表情には浮かばない焦りが、彼の心に忍び寄りつつあった。「あらあら、どうしたのゥ?」 死角から抜き放った投擲剣を、女の短剣に弾き返された。 狙い、タイミング、一撃の速度――全てに申し分のない一撃だった。 遺跡の怪物――とりわけ、その低級なものであれば今の一撃で八割は仕留めている。 それを簡単にいなされる。 そんなことが、もう十数回も繰り返されていた。「……ち」 さしもの男も足を止め、女を油断なくうかがった。 先ほどから、まるで最初から分かっているかのように攻撃を防がれている。 初対面の相手だ。 所見の敵を、その戦術を相手に、これほどまでに動きを合わせることは簡単ではない。 幾度となく戦った相手ならば、それが成立することもある。 あらゆる秘技、必殺の一撃さえも、防がれてしまうことが。 腐れ縁とでもいうべき相手――男にとっての、とある女傭兵のように。 相手の力量が確かであることも要求される。 それほどに、簡単なことではないのだ。「俺が……見た目で、侮った、ということか?」 悩ましく自問自答する男を、誰も責めることはできまい。 エプロンドレスの大女が、信じがたい手誰だと誰が想像できるだろうか。 正当な技術を重んじる人間は、奇抜な相手を軽んじてしまう傾向にある。 それを狙っての格好であれば、より女を危険視する理由にもなるだろう?「ねェ、来ないの?」つづきはこちら
-��- 闇よりも暗い獣は、口惜しそうにその場を去った。 鋭い眼差しで去っていく獣を見送り、その姿が視界の果てに消えてから、 傭兵は荒い息をついてその場に膝を突いた。 握力を失った両の手から、重量のあるグルカ刀がドサリと落ちる。 全身の傷からは血が溢れだし、傭兵の足元に鉄サビ色の水溜りを作る。 ――傭兵の肉体は、とうに限界を超えていたのだ。 息がつまり、熱いものが喉元から競りあがってきて、 傭兵は自分の血溜まりへと吐瀉物をぶちまけた。 霞む視界、手探りで荷物から水を見つけ出し、どうにか蓋をあけて口につける。 肺腑が軽く痙攣を起こしており、飲み込むことすら困難な様子であった。 座り込んだ姿勢のまま動くこともできず、血と吐瀉物に塗れながら、 傭兵はただ、自分の身体が癒えるのを待った。 肉体から離れ、ただ鋭敏になった感覚は、周囲のことを傭兵に伝えてくれる。 ここから先、歩いてひと時もかからない程の場所に、 先ほどの獣など比べ物にならない何かの気配があった。 それが、傭兵の目指すものなのかどうかは、分からない。 しかし、先刻見た地図の地形を思い出してみれば、避けて通れない地点でもあった。 傭兵が遺跡を守る側であったならば、そのような要所に罠を仕掛けるだろう。 守りにまわった側の、初歩的な戦略といえた。「……は、はは」 呼吸が楽になり始め、筋肉の痙攣は絶頂を極めた。 突っ伏すように地面に倒れこみ、無理やり体を捻って仰向けになる。 回廊に潜む魔物がうごめいているのが、視界の隅に映った。 彼らはあの美しくも孤独な迷宮から、永遠に外へ出ることは適わないのだ。 風に混じる獣の臭い、冒険者の臭い――それらに気を配りながら、傭兵は歯を食いしばる。 いま、再び襲われたなら、もう勝ち目はない。 あの獣の気配は、すでに遠くへと霞んで消えていた。「……少し、休むか……」 饐えた自身の臭いに眉をひそめながら、傭兵は静かにそっと目をとじた。 目覚めたら、歩き出すのだ――次の、戦場へと。つづきはこちら
-��- 熱砂の砂漠を抜けると、そこは冷え冷えとた風の滞る回廊の入り口だった。 額にかいた汗が急激に冷やされて、ぞくぞくした怖気に襲われる。 その感覚も相まって、この回廊にはただならない気配が感じられた。 それはこの先に待ち受ける存在が、放つ存在感によるものかもと乙女は思う。 静かな回廊の中は、だがしかし、確かな生命の息づきに満ちていた。 視線を闇の中に向ければ、淡い燐光を放つ精霊が飛んでいる。 それらが眼に見えて映るのは、乙女がかつてこの島に暮らし、マナの影響を受けているからだ。 ましてや、夢幻に捕らわれた身である乙女は、一種彼らと近しい存在となっている。 ただし、本人がそれと知ることはない。「……綺麗ねェ」 闇の中に浮かんでは消える青白い輝きをうっとりと眺めやりつつ、乙女は先を急いだ。 円筒状の回廊は折れ曲がることもせず、ただひたすらに真っ直ぐだった。 その形状は下水を思わせるが、嫌な臭いなどはなく、無味無臭の気味悪さがあった。 カツンカツンと乙女の足音が響くたびに、それが反響して何重にもなって返ってくる。 よくよく意識を集中しなければ、どれが本当の足音なのかも分からない状況だった。 気を抜けばそれに混じって、遺跡の怪物が襲い掛かってくるかもしれない。 あくまでも、足取りは軽やかに。 だが、周囲八方に向けられた、乙女の警戒のアンテナは尋常のものではない。 ここは、そういう場所なのだ。 眼を凝らせば、闇の中に回廊の壁面が浮いて見える。 繋ぎ目すらないつるりとしたその表面に縦横無尽に走っているのは、 他ならない怪物の爪痕であり、一見模様に見えるそれは彼らの返り血であった。 惨劇の跡があたり一面に広がっているにもかかわらず、ここは静謐さを保っている。 それらの殺戮さえも、無音のうちに行われたということか。 遺跡のどれほどの深さに相当するかは分からないが、 この階層の危険度は、上階と比べるまでもないことは明らかであった。「嫌な風ねェ。何も、感じないわァ……」 ときおり、円筒状の回廊内を、いままで来た道へと向かって生暖かな風が吹き抜けていく、 のっぺりと頬を風が撫ぜていく感覚は、いかにも無機質で不快だった。 その中には、獣の臭いのひとつも感じない。 さきほどから見られるのはやはり、精霊や死霊の類ばかり。 この回廊にはいってからというもの、気配こそ感じるものの、 動物のような有機体といまだに出会ってはいなかった。「薄気味悪いはねェ……何か、嫌な予感がするわ」 何も起きなさ過ぎることが、懸念であり、乙女の第六感を刺激するのだ。 悪いことが起きるような気がして、乙女は警戒を強めながらもただただ前へ進んでいた。つづきはこちら
-��- ふわりふわり、足場の悪い砂地を、軽やかな足取りで乙女は歩く。 さらさらと風が吹くだけで流れる粒の細やかな砂の上。 どのような技術によるものか、足跡ひとつ残らない。 目指すのは遥か遠方に感じるとても儚げな気配――乙女を呼ぶ存在。 それが、どのようなものなのか、想像のうちに思い描いてみる。「ふふ、素敵な殿方だと良いのだけどぉ♪」 想像は自由だ――乙女の微笑に合わせて、薄桃色の日傘がふりふりと揺れた。 いまとなっては懐かしい遺跡の擬似太陽が、さんさんと乙女を照らしだしている。 夢の中に目覚めてからここへ至るまでに、乙女の感覚では一日が過ぎていた。 これほどまでに、長い夢を見た経験はない。 不自然な夢の世界――目覚めるには、それと出会うほかはない。「……何を、果たせというのかしら?」 自然のうちに、乙女は理解している。 何かを果たさなければ、けして、この夢が醒めることはないのだと。 なぜ、乙女が選ばれたかは定かではない。 偽りの島――遥か南方に存在するという、宝玉の眠る島。 かつて、乙女自身が時を過ごした。 そんな乙女が、この地を離れて、もう、三年が経過している。 望んでのことではないが、最終的に離れることを決意したのは乙女に他ならない。 強制的な退去までに、時間は残されていたが、乙女は一足早く旅立ったのだ。 誰にも、最後の別れを告げることなく―― とても、不義理なことをしてしまったと思う。 いち早く旅立ちたかった――それは、乙女自身のエゴでしかない。 しかし、その決意を乙女に与えてくれたのは、乙女を支えてくれた人々。 偽りの島の冒険で、出会った人々の存在に他ならない。――寂しさを教えてくれた彼女が、残していった孤独。 それが、乙女をこの島へと導いた。――それを癒してくれたあの子たち……。 脳裏に浮かぶ、乙女サロンの賑やかな風景。 そこに足を踏み入れたことのない不器用な男と、幼い少女の姿も思い浮かべられる。 彼女たちと過ごした日々が、乙女に過去と向き合う勇気を与えてくれた。 それから、三年――乙女は世界の紛争地帯を歩いて回った。 自身がもたらした結末と向き合い――全てを、受け止めた。――お墓参りも、何年ぶりだったかしら。 それはきっと、初めてのことだったかもしれない。 三年、短い期間ではない――だが、全てを回るのに、三年を要した。 傷も、新たに増えた――それほどの、旅だった。「……そして、あの子と出会った」 真に目覚めれば、その少女は、乙女の腕の中で寝息をたてていることだろう。 始まりの島――いつしか、乙女はこの島をそう呼ぶようになっていた。――血と殺戮に彩られた戦いの日々 ――彼女と暮らしたスリル溢れる生活 ――その果てに手に入れた、第三の人生 その日から、乙女は探し続けていた。 始まりの地を。 そして、乙女にとって、終わりとなるであろうこの地を。「探しても見つからないこの島が、夢の中で見つかるなんて♪」 一度離れた島への道は、思い出すこともできない。 それが、招待状に記されたルール。 望みを手にするか――全てを失うか。 さもなければ、島を離れることはできないのだ。 不完全な状態で離島したためか、その全てが失われたわけではなかったが。 かといって、たどり着くことは容易でもなかった。 その明確な情報を手にしたのは、昨夜、眠りに就く前のことだ。 古びた宿の一室――簡素なベッドの枕元。 かつて見たものと同じ手紙が、そこに落ちていた。 偽りの島へと冒険者を誘う、何者かからの招待状。 運命の片道切符を、乙女たちは手に入れたのだ。「その直後に、この夢――できすぎ、というものねぇ?」 自問自答――因果的なものを感じずにはいられない。 探しても探しても見つからなかったものが、こうも簡単に見つかったのだ。 乙女の勘は、その背景に何かを感じとる。「あら――」 もの思いに耽りながらも、足を進める乙女の前方に、何者かが立っていた。 美しい白砂の砂漠にあって、それよりもなお白い人影。 まるで、ウェディングドレスのような衣装を身にまとい、眠るように目蓋を閉じている。 近づくと、とても美しい女性だと知れた。「まぁ……♪」 その端正な横顔に、思わず嘆息する。――物語の中の眠れる森のお姫様みたいな方ねぇ♪ ドキドキと高鳴る胸――それは、乙女回路の超反応。 乙女は足を止めて、女性に向かってにこやかに微笑みかけた。 眠っているのか、起きているのか。 にこにこしながら、じっと眠り姫の動向をうかがう。「――あなた」 乙女より先に、眠り姫の唇が涼やかな声を紡いだ。「……お料理は、得意かしら?」 女性の問いかけ――乙女の瞳がキラキラと輝く。 白砂の稜線が描き出す美しい風景の中。 乙女は、眠れる茨の魔女と、出会った。つづきはこちら

 

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